2022年5月19日
岡山大学大学院環境生命科学研究科の嶋一徹教授は、2015年1月に廃棄物対策豊島住民会議の安岐正三事務局長から「何となく植物が生えて緑になっているが、元の自然とは違うのではないか」との相談を受けたのをきっかけに、不法投棄現場周辺の植生を調査しました。
調査の結果、かつてはコバノミツバツツジやナツハゼなど約18種類ほどの植物が生えていましたが、不法投棄によって植生が破壊され、半分以下に減ってしまったことが判明。安岐事務局長より、不法投棄現場に元の豊かな自然が戻るまで産廃問題が終わらないこと、自然の力を使って植生が回復する手法を示してほしいことなどの強い想いを受け、2015年4月より、調査研究と植生回復活動に取り組んできました。
岡山大学大学院環境生命科学研究科
嶋一徹教授
今回、NGPが豊島の環境再生を目指し、掲げたゴールを達成するため、今後の活動について瀬戸内オリーブ基金に相談。岡山大学の行っている植生回復活動の話を受け、目指す姿、想いが同じであるということ、活動を進めていく上で岡山大学側の人の手が全く足りていない状況を聞き、豊島の植生回復の手助けができるならばと産学連携による活動をこの度スタートいたしました。
岡山大学では、植生回復の一環として、コバノミツバツツジの種から苗木へと育成しその苗木を一年間、地元の小・中学校に預けて毎日水やりをしてもらい、不法投棄現場に植樹する活動を行っており、NGPは2021年2月、豊島小・中学校、岡山大学、瀬戸内オリーブ基金と共同で植樹式に参加するなど、以前から交流がありました。
今回NGPが岡山大学と連携して作業を行った場所は、不法投棄現場の見学に利用するために瀬戸内オリーブ基金が設置した見学道の階段の脇です。ここは、岡山大学の主な植生回復活動の現場であり、この場所で活動を行うことにより、不法投棄現場の見学だけではなく、環境教育を行うことを目的とした場所です。
見学道の植栽地は、不法投棄の影響で植生が崩壊し地面が露出した状態であったため、斜面の崩落を防ぐ目的で植えられた外来種のコマツナギが繁殖。不法投棄が行われる前の植生とは異なる状態になっており、僅か数種類の植物しか生育しておらず多様性が極めて乏しいのが現状です。 「見た目は緑が回復しても豊かさは回復できていません」と嶋教授は語ります。
そこで、見学道の植栽地では、本来自生していた多様な植物を、島内で採取した種子から育苗して植栽しています。
見学道の植栽地で植栽している植物
- シャリンバイ
- イヌザンショウ
- クスノキ
- イヌビワ
- アカメガシワ
- トベラ
- ヒサカキ
- コバノミツバツツジ
- タラノキ
【見学道の植栽地】植栽された植物のネームプレート
NGPとしては、今回初めてこの活動に参加し、嶋教授と土壌環境管理学研究室の学生たちによるレクチャーを受けながら、植生された植物の成長を阻害する雑草・外来植物の除去、しがら柵の補修、樹木への名札付け、雑草繁茂抑制と土壌乾燥を防ぐための堆肥の敷設を行いました。
作業の説明をする嶋教授
嶋教授(後列右から3人目)と学生たち(前列3人)、NGPボランティア
雑草の除去作業の様子
しがら柵の補修作業の様子
ネームプレートの設置
作業前
作業後
また、今年2月に豊島小・中学校、岡山大学、瀬戸内オリーブ基金と合同で植樹した、コバノミツバツツジの植栽地では、成長を阻害する雑草の除去と植栽地の脇の水路の側壁崩壊を防ぐための土嚢の設置を行いました。
【コバノミツバツツジの植栽地】雑草の除去作業の様子
作業前
作業後
【コバノミツバツツジの植栽地】土嚢の設置作業の様子
参加者からは、
「一度破壊された自然は長い時間をかけないと元に戻せないと改めて感じた」
「豊島の環境が完全に元に戻るまで活動に関わりたい」
といった声が聞かれました。
夏場にかけて雑草が繁茂していくため、今後も定期的に活動を行い植生回復に取り組んでいきます。